ⓔコラム11-5-6 間欠的虫垂切除 (IA)
IAは蜂窩織炎性虫垂炎や壊疽性虫垂炎などの高度炎症例に対して抗菌薬投与を行った後,炎症が限局化したまま鎮静化した膿瘍形成性虫垂炎または腫瘤形成性虫垂炎を適応とした保存的治療後の手術介入である.小児科領域で1990年代に多く行われるようになり1),成人でも2000年代になって報告されている2).炎症が高度な時期に根治手術を行うと創感染や術後腹腔内遺残膿瘍,腸閉塞などの術後合併症が多くなるのに対し,IAではこうした合併症を軽減することが期待できる.炎症が軽減あるいは消退することで,IAを鏡視下で行うことも可能となる場合がある.しかしながら,抗菌薬で鎮静化しなかった場合は汎発性腹膜炎から敗血症に進展したり,門脈を介して肝膿瘍を形成したり,より重篤な病態になる可能性もある.そのほかにも痛みの持続など保存治療中のQOLの問題,複数回の入院リスク,入院期間の延長などのデメリットもあり,その功罪は議論の余地があるともいわれている.いずれにせよIAを選択肢とした場合は,抗菌薬で症状が軽快しない場合も想定して,経過中にいつでも手術対応が可能な状況で慎重な観察下に行われる必要がある.
〔酒井哲也〕
■文献
本泉 誠,塚本能英,他:小児虫垂炎に対するInterval Appendectomyの適応と有用性.日本小児外科学会雑誌,1991; 27: 698–704.
前田 大,藤崎真人,他:成人の虫垂膿瘍に対するinterval appendectomy.日本臨床外科学会雑誌,2003; 64: 2089–2094.